大注目の3/18 米中外交トップ会談@アラスカ

週明けて来る3/18、バイデン政権発足後初めての米中外交トップ会談がアラスカで行われる。

ふだん自分は政治の世界にはまるで興味がないのだが、この先数年ばかりは世界のパワーバランスが大きく転換するタイミングだと思われるので、注目したくなる。

 

以下では個人的に思う背景や見どころについて、書いてみる。 

 

クアッドについて

これは日米豪印の4か国の結びつきだが、イデオロギーや外交関係の上で比較的安定した関係を土台として協調することで、地政学的(とくに安全保障と経済圏)なメリットを強めようとするものだ。中国とロシアを中心とする旧共産圏は今やユーラシア大陸の東北領域に固まっている。(例えば南米やアフリカの社会主義国家は冷戦後ことごとく崩壊してしまった。)


クアッドは、総体的にパワーダウンしつつあるアメリカが、相対的にパワーアップしてきている中国に対抗する基盤だ。

日本からみると、インドは大きなODA(政府開発援助)対象国、豪州は最大の資源輸入国、米国は最大の安全保障母体、というわけで、中国が依然として日本の最大の貿易相手国であることを差し引いても(日本は中国から見たら「得意先すなわち客」なので多少は大丈夫)こちら側の陣営での存在感を強めるインセンティブが大いにある。

米国がイニシアチブをとろうとする陣営に半ば受け身で身を置くだけで、引き続き資源の安定供給元である豪州と今後の有望得意先であるインドと仲良くしていけそうなので、しばらくはこの陣営でいくのだろう。(受け身といってもクアッドは日本主導で作ってきた体制ではある。今回の会談で米国がクアッドをどう見ているかがより鮮明になる点も見どころの一つだろう。)

 

シンガポール、韓国、香港

最も難しい外交のかじ取りを必要とする国は、シンガポールである。経済的には米中の両方と密接な結びつきがあるが、地政学的には中国やアラブとの関係が対米関係よりも重要である。なので米国からの牽制をさしおいて、中国と合同で軍事演習を行ったりしている。

韓国は、中国にも米国にも逆らえない国である。韓国にとって中国は最大の輸出相手国であり、いわば「お得意様」であり、中国との経済的な関係が悪化すると大きなダメージを受ける。同時にイデオロギー的には西側陣営に立つことで経済発展を遂げてきたので、米国との関係も悪化できない。つまり今の韓国にとって「タテマエは米国と仲良く」しなければならないが「ホンネは中国と仲良く」したいのが現状だろう。韓国国内ではメディアが政府の外交政策を「中国にいいようにほだされて、対米関係を悪化させている」と批判しているようだが、真実は逆だと思う。韓国はかなり戦略的に中国にすり寄っているはずだ。

(戦略的に、というのは具体的に言うと、中国は「『今起きている事実』としてものすごい経済的なパワーアップの最中にある」ものの社会主義なのか自由資本主義なのか微妙というイデオロギー的な脆弱性があり、それが中国という国の安定存続リスクとてあるため、そのリスクを計算しながら付き合わなければならない、ということだ。しかしその強力な社会主義体制のおかげで強制的にビッグデータを収集できたりと、中国はそのイデオロギーに由来する「強み」も併せ持っていたりするので、今後どうなるかとても予想が難しい国である。)


香港は、そういう意味では韓国と逆向きのベクトルをもつ経済圏だ。すなわち「ホンネは米国と仲良く」、「タテマエは中国と仲良く」したい国である。香港は中国の虎の子の場所なので、香港から見たら中国市場との関係を心配する必要はあまりない。むしろ中国は「安定既存顧客」なので関係が穏便でありさえすればよく、ホンネとしてはイデオロギー的にリベラルを強めて経済発展を加速したい(つまり香港はシンガポールのようになりたい)ところだろう。

そういうわけで、米中のパワーバランスをウォッチするには、ちょうど中立のシンガポール、西側から東側へのベクトルを持つ韓国、東側から西側へのベクトルを持つ香港、という3者の動向をみているのが一番よさそうに思う。

 

米中外交会談の見どころ

あまり難しい前提知識などは必要なく、(だから素人の私がこういうブログを書きたくなるのだ)、スバリ、中国と米国の力関係が「いまどのくらいなのか?」を推し量ることに尽きる。

 

米国は、経済よりも安全保障上の問題やリベラリズムに関わるイデオロギー的な問題を俎上に挙げるだろう。なぜなら、かつて米国が抱え込もうとしていた東南アジア諸国(ASEAN)をクアッド同盟側に引き込む理由が今やそれしかないからだ。


逆に中国は、イデオロギーの多極化という正義を訴えるだろう。


要するに、背景にある「経済的なパワーバランスについてのつばぜり合い」が、イデオロギーや安全保障や社会正義の問題を使って間接的にやりあうような場になるはずだ。

(人類の歴史上いつだって、イデオロギーや安全保障の問題は経済問題の代理問題だ)


したがって、会談の動向は、すべて「背後にある経済的なパワーバランスの現状」に読み替えて解釈するのが面白いだろう。


また来週あたり、自分なりの独断と偏見による解釈を本ブログで書きたいと思う。