運動生理学とダイエット

ビールの飲みすぎなのだろう、最近おなかが膨らんできてヤバいと思い、ジム(文京区総合体育館トレーニングセンター)に通い始めて1か月ちょっとが経った。体重は2キロほど落ちたような気もするが、±2キロくらいなら身体の水分量で容易に変動しうるので誤差の範囲だろう。

 

運動の習慣が出来たことで運動生理学に興味を持ち、本を読んだりネットで調べたりして、自分なりにダイエット法を考え実践してみている。まだまだ成果が出ているわけではないが、どんなものかちょっと紹介してみようと思う。

 

人体がエネルギーを生み出す仕組み

まず始めに、人間が体内でどのようにエネルギーを作り出しているのかについての大まかなイメージを持っておきたい。これはとても簡単で、「酸素を使って燃料を燃やす」というイメージでたぶん問題ない。

 

車のエンジンはガソリンを燃やすことでエネルギーを生み出しそれを動力に変えるが、それと同様に人間も、体内に蓄えられた燃料を燃やす(とはいえ火がでるわけではないが)ことでエネルギー(正確にはATPという「エネルギーを取り出しやすい物質」)を得る。

 

ここで非常に大事な知識となるのが、燃料には糖と脂肪の2種類があるということ。グリコーゲン(=糖)は燃えやすいが貯蔵しにくく、脂肪は燃えにくいが貯蔵しやすい、という相反する性質を持っている。どちらも酸素と結びつくことでエネルギーを取り出すことが出来る。

 

この働きを担っているのが細胞内に存在するミトコンドリアという物質だ。酸素が血液から運ばれて細胞内に取り込まれると、ミトコンドリアがその酸素を使って糖や脂肪をエネルギーに変換してくれる。

 

糖質代謝と脂質代謝

糖質と脂質はいずれもミトコンドリアで酸素を使ってエネルギー(ATP)に変換されるのだった。しかし糖質は脂質にはない特徴を持っている。

 

それは、糖質は「酸素がなくてもエネルギーを取り出すことができる」という特徴である。

 

酸素を使わずに糖質からエネルギーを取り出すと、ピルビン酸という難しそうな名前の物質が出来て、ミトコンドリアはそのピルビン酸をさらに燃やしてエネルギーを得るという2段構えになっている。

 

酸素が足りなすぎるとピルビン酸を燃やすことが出来ず、乳酸に変えられてしまう。ミトコンドリアはその乳酸も燃やすことが出来るがやはり酸素が足りないと乳酸がどんどん蓄積されていき、身体に痛みを生じさせるようになる(これが肉体疲労の主要因の一つ)。

 

したがって、上のほうでも書いた通り、糖はエネルギーを得やすいが貯蔵しにくい物質なので、使う時はなるべく酸素の行き届く条件で使ってエネルギーを最大限引き出したい。それにそもそもダイエット的には脂肪を燃やしてほしい。

 

そうした事情を鑑みると以下のポイントが重要になってくる。

 

(1)体内に酸素を効率良く供給できること(循環器系・心肺機能の向上)

(2)短時間に大きなエネルギーを使わないこと(グリコーゲンの温存)

 

つまり、心拍数を(無理のない範囲で)上げつつ、運動負荷が低い状態をキープすることで糖に比べて相対的に脂肪の燃焼比率が高まるので効率よいダイエットにつながる。

 

血糖値と脂質代謝

また注意しておきたいのは、血糖値が高い状態では身体が「脂質代謝に制限が掛かり糖代謝が促進される」モードになるという点だ。

 

運動前に(例えばバナナを食べるとかで)糖分を補給すると、血糖値が上がり身体が糖質代謝モードになる。これによって高負荷な運動をスムーズに行えるようにはなるが、それでもし糖を使い果たしてしまうといわゆるスタミナ切れになってしまい、効率よく脂肪を燃焼することが出来なくなってしまう。

 

逆に言うと血糖値が低い状態で運動を始めると、脂質代謝の比率が相対的に高まる。なので、運動で脂肪を燃やしたいすなわちダイエットしたいならば

 

(3)朝起きて朝食取る前や、日中・夜間ならば空腹時に運動するのが良い

 

ということになる。なお、運動を始めてしまうと血糖値による脂質代謝の制限は掛からなくなるそうなので、運動してる間にスタミナ切れ(グリコーゲンの枯渇)を起こしそうなときは糖分補給を行うことで脂質代謝の効率をキープしつつスタミナを補充することが可能だ。

 

レベルアップ運動とレベルキープ運動

(まず最初に断わっておくと、レベルアップ運動やレベルキープ運動というのは私の造語であって、運動生理学の用語ではない。)

 

前節までで、なるべく低負荷で高心拍数の運動がダイエットに良いという考察をしたが、高負荷の運動にも良い面がある。

 

それは、「負荷の高い運動を行うとミトコンドリアが増える」という仕組みだ。

 

負荷の高い運動にはこれまで説明したとおり「あまり身体に貯蔵できないグリコーゲン」を消費してしまうのでダイエット効率は良くないが、それによってミトコンドリアを増やすことが出来、それによって「糖や脂肪を効率良く燃やせる身体」が作れるので長期的にはダイエットにつながる。

 

したがって

(4)グリコーゲンはなるべく高負荷運動のために使いミトコンドリアを増やす

ことを意識することも重要だ。

 

炭水化物や糖分を摂りすぎてしまったときは負荷の高い運動を多めに行って、その糖分を燃やしてミトコンドリアを増やしてしまうと良いだろう。

 

貯蔵可能量を超える糖分は体内で脂肪に変換されて貯蔵されてしまうため、

(4´)体内に糖質が多い状況では高負荷運動の意義がとても大きい

と言える。

 

まとめると、糖質はなるべくレベルアップ運動のために使いたいし、糖分(炭水化物含む)を摂りすぎてしまったときはレベルアップ運動の大チャンスだ。逆に糖分を使い切ってしまってるようなときは高負荷運動を避け、レベルキープ運動によって脂肪を燃やすのがよい。

 

基礎代謝向上 vs 脂肪燃焼体質

ダイエットの考え方として「基礎代謝を上げることで太りにくい身体を作る」というものを時々見かける。

 

しかし運動生理学的には基礎代謝は年齢とともに徐々に低下してゆき、筋トレや運動によってそれを向上させることは出来なくはないがそれは微々たる量に過ぎないのだそうだ。

 

もし基礎代謝を上げることが出来れば「運動してない普通の日常生活の時間にもダイエット効果がある」という理想的な状態になるのだが…。

 

そこで私は同様の効果が得られる方法を考えた。それは、

(5)食事において糖質を減らし、カロリーをなるべく脂肪で摂取する

というものだ。

 

また牛や豚・鶏は飽和脂肪酸が多いため体内に蓄積されやすく、魚肉や植物油・ナッツ類は不飽和脂肪酸が多いため体内に蓄積されにくい、という性質があるので

(5’)牛豚鶏はたんぱく質多めのものを、脂肪は魚肉やナッツ類で摂取する

ことも心掛けたい。

 

注意点として、運動を全くせずに脂肪中心の食生活に変えるだけだと、ミトコンドリアも多くなく糖と脂肪の燃焼比率も普通は糖のほうが消費されやすく6:4くらいなので、日常生活で疲れやすくなったりカロリーは(脂肪で)取ってるのにおなかがすいてしまうということがある。

 

私は以前、運動を全くしてなかったとき、体脂肪率が結構高いにもかかわらず食事を減らすと猛烈におなかがすいてしまうことが不思議でならなかった。「脂肪がついてそこにカロリーが蓄えられてるのだからそれ使えばいいじゃん」って思ったからだ。

 

しかし運動生理学的にはそれは当然なのだ。運動してないのでミトコンドリアの量が少なく、その少ないミトコンドリアをやりくりして主に糖質代謝でエネルギーを生み出そうとする体質なので、脂肪が身体に多く貯蔵されていたとしてもそれを効率よく活用することが出来ない。

 

さらに人間の脳は他の臓器とちがって糖質が無いと働かないという特徴がある。脳の機能が低下すれば自律神経にも支障が出てしまい、身体の代謝コントロールにも影響してさらにエネルギー生成効率が落ちてしまう。そんな状況で身体が糖や炭水化物を欲するのは当然だ。

 

なので、この脂肪中心の食生活は運動の習慣とセットで行う必要がある

 

運動の習慣があって、ミトコンドリアの量も増えてゆけば、身体が糖よりも脂肪をメインに消費する体質になり、体内に脂肪がある限りカロリー(糖質や脂質)をあまりとらずミネラルやビタミンやたんぱく質のみを摂取する食事のみで日常生活を快適に送れるはずである。

 

これは、「筋トレや運動による基礎代謝向上」に期待されることと(内容は違えど)効果はほぼ同等である。(1)~(4)で挙げた運動のやり方と(5)の食生活を組み合わせることで、効率の良いダイエットが期待できるのではないだろうか。

 

というわけで

年内に7キロくらい落としたいですね~。自分で知識を仕入れて考えたことが有効かどうかを確かめるという科学的な興味としても楽しみではあります。

 

さて、どうなるだろう?また数か月後に経過報告を書くかもしれません。

 

ではまた。