はじめに
最近はろくに仕事もせず、毎日朝から晩まで数学の勉強をしています。今が人生で一番幸せなときかもしれない。
それはさておき、バレンタインデーです(でした)ね。
YouTubeを見ていたら、手作りチョコを調理映像とともに披露している女性YouTuberを幾人か見ました。
そこで本記事は私なりに考えた結果である
「形の美しいチョコレートはおいしいチョコレートである」
ということを科学的に説明しようと思います。簡単なので読んでみてください。
チョコレートはどんな物質か?
まず、チョコレートはどんな物質かというと、添加物が混じった油脂の結晶個体です。油脂の溶けやすさは、含まれている脂肪物質の種類や結晶構造によって変わります。
チョコレートを製造する食品メーカーは、それらの成分や結晶構造をうまく調整して、体内(口腔内)と体外の温度のちょうど中間あたりの温度でとけるよう工夫しています。
市販のチョコレートを自分で溶かしてオリジナルな成型をすると、成分は(揮発などにより多少は変わるとはいえ)基本的には変わらず、主に結晶構造の違いが生じることによっておいしさが変わります。
オリジナルチョコを作る際、材料(成分)を独自に添加することなしに融解・再成型しただけの場合、しばしばもとのチョコよりまずかったり、というかめったに元のチョコよりおいしくならないのは、メーカーによる結晶構造調整力の高さとその再現性の難しさに起因しているわけです。
口どけの滑らかさとは?
そうした融解温度が、氷(0℃で解けますよね)のように一定の温度に集中している場合、チョコを口に放り込んだ時にじわっと滑らかに溶けていくのではなく、表面でしか溶けていかない「固い」舌触りのチョコとなってしまいます。
逆にその融解温度が、体外の温度と口腔内の温度の間の温度帯に広がりを持っている場合、口の中で温まるにつれて滑らかに溶けていく、いわゆる「口どけの滑らかなチョコ」となります。
成型のしやすさとは?
完全に固形状態のチョコは、ナイフで外周を切り落としたり型抜きでかたどったりをする際、壊れやすいという経験法則は多くの人に同意されることでしょう。
チョコレートは油脂の結晶という観点で見ると「不純物」をたくさん含む個体であるため、脆性(ぜいせい、すなわち、もろさ)が氷などと比べて高いです。毎年北海道の雪まつりで展示披露されるような見事な氷の彫刻のような造形は、氷の単一結晶としての均一性の高さに起因しているわけです。(厳密にはチョコは固体コロイドなので氷との直接比較は理論的にはまずいのでしょうが…カジュアルなブログ記事ですし…)
つまり個体のチョコレートは原理的に脆く、成型が難しいのです。
よって、市販のおしゃれな形をした贈答用チョコレートがおいしさと形の美しさを両立できている理由は、チョコレートの製造プロセスの中に成型工程が組み込まれているからであり、個体のチョコレートを成型する技術が高いとかそういう理由ではないはずです。
したがって個人のオリジナルチョコのレベルでそれ上手に模倣しようとするなら、再成型時の温度帯を融解温度付近まで上げていかざるを得ないでしょう。
その際、もし「融解温度帯の広がりが狭い」場合、温めるとすぐ液状化してしまうし冷ますとすぐ固まってしまうしと、成型に適した柔らかさ(脆性の低さ)をなかなか維持しにくくなります。
逆に広い融解温度帯をもっている場合、多少の温度の変動があっても成型しやすい柔らかさをキープできるわけです。
つまり、
「成型のしやすいチョコは、口どけの滑らかなチョコである」
ことが結論づけられるわけです。
もう一つの理由付け
先ほど、オリジナルな再成型における成分の揮発は多くないといったことを書きましたが、とはいえあまり温めすぎると香りその他の成分の一部の揮発も増えそうです。しかも温めるにつれてメーカーが調整した結晶構造が壊れる割合とも対応するので、温めすぎによる品質劣化はその両面で効いてくるわけです。つまり
「成型のしやすいチョコは、成分の揮発が低く抑えられている」
ということも言えるかもしれません。
というわけで
というわけで、おいしいチョコと成型の見事さの間には実は正の相関関係があった!という話でした。
これで、
オリジナルチョコを見ただけでおいしいかまずいか大体想像がつくということにも科学的な根拠づけができたといえるかもしれません。
ところで、では「どうしたら融解温度帯の広い結晶構造分布を再現できるのか?」については「なるべく温めすぎないように注意する」以外のことは私はわかりません。もっといろいろノウハウがきっとあるのではないかと思います。
それについては個々の愛のパワーにお任せしようと思います。
おわり。
(追記)
と、ここまで書いて自分で気づいたのですが、再成型時に思いっきり高温で融解して完全に液体の状態で型に流し込めば自由な造形ができ、それは形はきれいだけど美味しくないチョコになってしまうことに気づき、本記事はやっぱりボツかなと思ってしまったのですが、せっかく書いたので残しておきます。