小さなジャンプ

最近、自分の強みって何だろう?というのを改めて考えた。

私は色んなことに興味があって世間一般のエンジニアと比べると新しいことを学び取るのが多分かなり速いほうで、だから知識はいっぱい持ってると思うのだが、知識それ自体は仕事のアウトプットに直接結びつくものではない。 実際、知識ってありすぎると逆に頭でっかちになって行動力を削ぐような副作用も実際あると思う。

じゃあ肝心のエンジニアとしてのスキルは?と自問すると、そんなに強い方でもないと思う。 バグなく機能を実装したり、込み入った問題やバグを素早く原因究明して直したり、というソフトエンジニアの実務上の能力は低くはないと思うが(今の会社の同僚のエンジニアと比べると)取り立てて高くもない。

じゃあ新しいものを生み出す研究や発明的な能力は?と考えると、それも国際学会で賞を取ったり有用な特許技術を考案したりとかいう実績もないから、そういう領分でもない。

そうやって今までの経験を棚卸しして思ったのは、

自分は「小さなジャンプ」が得意だな。

ということだった。それについて、以下にちょっと詳しく書いてみる。

スキルの高いエンジニアと会話してると良く感じるのが、「これは出来る」「これは試行錯誤が必要」「これは出来ない」という判断を取り組む前にかなり正確に見積もることが出来て、実際そのとおりなことが多いという点だ。研究と違ってプロダクト開発では試行錯誤には時間的な「期限」があるから、確実に出来ることを積み上げて何かを作り上げようとする。それは合理的だし、それを確実にやりきれる優秀さは大事だ。

でも、僕は言ってみれば「ロマン派」というか「ちょっとそれは期間内にやると言い切っちゃうのは出来なかったら信用失いそう」みたいなところのギリギリのところをどうしてもやりたくて、期間が決まってるなかでそういうテーマをつい入れてしまう。で、それを数日間(他の作業やったりしながら)「良い答えがパッと思いつかないものを、ずーっと考え続ける苦しいマゾ時間」として浴びつづけると、何か最後にはシンプルなウマい方法を思いつくのだ。思いついたら実際にそれを形にする。

その、最終的に出来上がったものは「ぱっと見、すぐに思いつきそうなごく当たり前の単純な感じ」のものであることが多く、なのでそれが「うぉーすごいね!」とはならないことが多く、少し悲しくもあるのだが「自分はそういうことが出来るのが当たり前」なんだから「別に褒められなくてもそれが当たり前の人として平然と生きていれば神様がこの能力をどんどん強くしてくれるだろう」みたいな心の処理をして今までやってきた(今回、そういえばそういう風にいつからか心がけてきたな、と改めて思った)。

これが僕にとっての「小さなジャンプが得意」という強みだなと思った。

ググっても出てこないし、どこの本にもどこの論文にも書いて無くて、ちょっとした発想のジャンプが必要になるのだけど、いったん飛び越えてしまうと「誰でも思いつきそうな感じ」の単純な解決策になるようなものを見出すのが得意

AIの新しい方法(TransformerとかNeRFとか)を生み出すとかいうレベルではないのだけど、どこにも答えが書いてない小さな課題を前にして小さなジャンプが出来ること、これは「あなたの仕事の上での強みは何ですか?」と聞かれてぱっと説明するのが難しいけど、仕事する上で重要な能力の一つだと自負してよいだろう、と思ったのだった。