米大統領選を見て思ったこと

もりあがってますね

今週のメディア報道は稀にみる混戦模様となっている米大統領選関連でもちきりだった。11/5現在はバイデン氏がかなり優勢とのことで、個人的にはそのまま大統領交代になるんじゃないかと思う。

 

そもそもトランプ氏が4年前に大統領になった背景には、もともと白人のフロンティア集団が作ったアメリカという国において、その基本政治経済基盤である自由資本主義経済のシステムが極度に強まった結果、国内外のグローバル化・多民族化が猛スピードで進行し、白人同士の競争社会として十分成長余地のあった時代が終わり、一部の(といっても少なくない)没落する白人たちの経済を支え切れなくなった反動というパワーが主要因としてある、というのがいくつかの解説記事を読んだ限りの自分の理解だ。(人種のるつぼといわれるアメリカだけど、依然として白人が70%超を占めている。)

 

資本主義と自由競争という経済システムは、生産性の拡大余地が十分にあるうちは大多数の労働者を十分に養いながら社会全体の生産性をも高めるようその機能をうまく発揮するが、その競争が及ぶ範囲(地域とか人種とか色々)において十分に生産性の最適化が進行すると、こんどはその競争の範囲自体を広げてまで最適化を進めるよう機能してしまう。

 

 その元来の矛盾を、アメリカは民主主義という政治システムにリベラリズムという経済システム的な「色」を加えた思想=「自由民主主義」を基盤に据えることでこれまでうまくやってきた。すさまじい最適化パワーをもつ自由資本主義という「経済」システムを第一に採用し、そこで生まれる諸問題を民主主義に基づく「政治」システムが「補助」していくというやり方だ。

アメリカが直面する「ズレ」

その方法は、政治システムがその権力を及ぼしうる範囲と、経済システムが巻き込む競争・最適化の範囲がある程度一致している間は当然ながら単純にうまくいく。そりゃあダメなところを補助する仕組みがちゃんと機能するなら、うまくいかない理由がない。

 

しかし、その範囲のズレが大きくなりすぎたらどうなるのか?それが今のアメリカという国が直面している事態だ。すなわち、自由民主主義は完全な賞味期限切れにはなっていないものの、もう過ぐ期限切れになりそうなシステムであり、それを基盤とするのが今のアメリカという国だ。

 

トランプ氏そして共和党はその範囲のズレに直面する(かつてのこの国を切り開いた人々である)白人たちを救おうとする象徴であり、バイデン氏はこの国の成立と成長を支えた自由民主主義というシステムを純粋に維持発展させていこうとする象徴である。

 

ちなみに、トランプ氏の支持者に白人以外の人もたくさんいるのは、氏のそのズレへの対処の仕方が大衆に迎合する分かりやすい方法(そういうのをポピュリズムというらしい)が多いからだそうな。それから、バイデン氏は長い間上院議員や副大統領を務めてきた人で、ホワイトハウスの政治に精通したいわば生粋のアメリ自由民主主義の担い手みたいな政治家だ。

 

しかし、ここまで本記事を読んでくださったあなたはこう感じるかもしれない。


「ぶっちゃけ、どっちの候補者も時代に対応できなそうじゃね?」


少なくとも、私はそう思っていた。根本的な問題は上述した「範囲のズレ」であって、今回は「人種のるつぼ」たるアメリカが、没落する一部の白人たちの声を抑えて自由民主主義を貫こうとする形でバイデン氏を選ぶのだろうが(といっても相当の接戦らしいので選挙後もねじれまくりそうではあるが)、そのズレは拡大する一方なので自由民主主義は迫りくる賞味期限への対応を迫られ続ける。 

選挙の後の状況を考えよう

要するに、バイデン氏、というか「アメリ自由民主主義」というやり方が、超スピードで進行するグローバル自由資本主義経済システムにどう対処していくのか?が、今後いちばんに注目していくべきところであって、それに比べたら「どちらが勝つか?」は実はそれほど重要ではない。

 

ただ、仮にトランプ氏が再選されれば、その対処の仕方がより保守的になり「アメリ自由民主主義」という色あいがはっきり見えづらくなるので、バイデン氏が当選したほうがその政治をとおして状況が見えやすくなるということはあるかもしれない。


現代の経済システムが持つパワーとそれが及ぼす範囲は、アメリカや中国といった大国の動向にすら左右されないだろう。経済の仕組みといえば昔だったら戦争でリセットされたりした時代もあったのだろうが、いまや経済はグローバル化してしまっているので、人類が滅んでしまうレベルの戦争じゃないとリセットできないだろう。なので、グローバル資本主義を前提として、政治システムのほうをチマチマ調整して対応していくことになるんだろう。

 

こういう場合、いちばん対照的な部分に目を向けると境界がみえやすいんじゃないか?ということで、「バイデン氏が関税の強化や対中国への姿勢についてどう考えているか?」を見てみよう。つまり、アメリ自由民主主義がグローバル自由資本主義がもたらしたズレへの対処としてどのくらい保守的な「賞味期限伸ばし」に「泣きつくつもり」なのか?を見てみよう、というわけだ。 

バイデン氏の基調=「同盟」及び「国際協調」

いくつかのメディア報道を見るに、トランプ氏ほどではないが、バイデン氏も対中国への姿勢は穏やかではない。端的にいえば、中国の強大化への対処として国際協調をかじ取りする立場を強めることによって(おそらく)相対的に中国の力を弱めようとするような路線なのだろう。

 

そもそものバイデン氏は、地球温暖化やサイバーセキュリティといった、国やイデオロギーを超えた問題に対しての関心がトランプ氏よりも強い(という姿勢である)。
こうした問題への対処は、そのグローバルさゆえにグローバル資本主義経済システムへの対処と親和性が高い。例えば、地球温暖化対策のために誰(どの国)がどのくらいカネを出すのか?あるいはどのくらい公害を減らす(=経済的に不利なルールを受け入れる)のか?といった問題でアメリカがうまくイニシアチブをとれたとする。そうしたら、その仕組みはグローバル自由資本主義経済システムにおける(アメリカにとって不利な)問題に対処する際にも同様に適用できそうである。

 

グローバル国際政治においてイニシアチブをとることで、グローバル自由資本主義経済の範囲と、自国の政治力が及ぼす範囲のズレをなくすというのがその根本的な対処法というわけである。

 

では、関税についてはどうか?バイデン氏は「自滅的な関税には反対」とのことだ。どちらかというとバイデン氏はお金の流れそのものよりも、それに影響を与える間接的要因にたいして積極的に働きかけていくような政治を志向しているように思われる。つまり、どうやらバイデン氏は、ポピュリズム的な「賞味期限伸ばし」に泣きつくつもりはほとんどないものの、その政治の方法論としては自由民主主義がこれまで(国内で)適用し続けてきたやり方を国際政治のレベルで応用しようとするものである、というわけだ。

 

バイデン氏の所属する民主党自由民主主義の上に福祉国家の色(=政治の力で社会に公平化の仕組みをたくさん作ろうとする傾向)を強めた「社会民主主義」を理念として掲げており、それが氏の政治方針における国際的な介入度の傾向と呼応しているのかもしれない。

 

ここまで見た個人的な寸評としては、バイデン氏、自由民主主義の長年の担い手たる政治家だけあって、その賞味期限を可能な限りは伸ばしてゆけそうである。報道記事を読んで僕でも理解できるような根本的対処に対して全方面カバーしようとしているように見受けられる。(自分が没落しつつある白人アメリカ人だったとしてもバイデン氏に投票したかもしれない。)

 

範囲のズレに対処する「まっとうな」(=関税とか鎖国とかじゃない)方法をバイデン氏は採用しようとしているが、中国も同じような「まっとうな」やり方でズレに対処しながら世界的な大国を維持しようとしている。なので中国とアメリカは根本的にそこに対立理由がある。バイデン氏といえども中国に対して全面的に温和な姿勢でいることはできない。

 

トランプ氏はわかりやすい直接的(ポピュリズム的)なやり方で中国に対抗してきているが、バイデン氏が当選したらより間接的なやり方で中国を国際的に包囲していくのだろう。

 

というわけで、本記事をまとめると、バイデン氏が当選すると現在や今後のアメリカの状況がより見えやすくなって良いですね、ということくらいかもしれない。1のことを語るのに10しゃべった感がハンパない。すみません。

おわり

実際には他にも特に軍事問題や自治問題などの国際問題についてバイデン氏の政策路線は興味深い特徴があるようですが、勉強中なので割愛。

 

また何か思ったら記事書きます(中国の動向や国際的なサイバーセキュリティの動向などに興味があります)。

 

では。