40歳を過ぎると、自分の寿命のことを考えるようになります。自分のこの先の人生に残された時間がそれほど多くないということをかなり実感します。それゆえ、「無駄なことをやりたくない」「回り道をしたくない」という気持ちがかなり大きくなります。
老い先短いので、無駄な試行錯誤が怖くなる
最近、某フレームワークを学びながらとあるサービスのプロトタイプを作ってみています。
今まで使ったことの無いフレームワークを使う理由は、それを使うことで設計の複雑さを少し軽減できればいいなという幻想を抱いているからです。しかしそう甘くないでしょう。
どんなフレームワークを使おうが設計上のリスクは至るところで存在し、最適でない設計でとりあえず書くしか無い場面がこれからまたどんどん出てくるのでしょう。いやだなぁ。
それに、新しいサービスをゼロイチでビジネスとして立ち上げるには、事業的な試行錯誤(PMF: プロダクトマーケットフィット)もたくさん必要になるでしょう。1ヶ月前に1週間以上掛けて書いたコードが全部無駄になるという場面もたくさん出てくるのでしょう。いやだなぁ。
そんな感じで、老い先の短さを考えると、なるべく無駄なくやりたいのですが、この「老害的な考え方」は ベンチャービジネスやスタートアップのゼロイチ開発とはまさに真逆の思想です。
フローの知識よりもストックの知識を好むようになる
私は、40歳を過ぎた頃から、数学や理論物理学を勉強する時間が増えました。このことからも、プログラミングのような日進月歩の知識ではなく、
- 「積み上がっていって掛けた時間が無駄にならない分野」
を自分が無意識により好むようになったことを実感します。
ビジネスにおいては、40を過ぎると技術よりもマネジメントにシフトするというキャリア戦略を取る方が多いと想像しますが、その戦略にはとても共感します。
経済合理的な理由で、相対的な学習コストが高まる
また私は独身だからまだよいですが、家族がいる場合は、新しいことを学ぶ時間を取ることもだんだん難しくなってきます。さらに、収入が上がっていたりするとプログラミング技術のような付加価値を出すのに高度な熟練スキルを要するようなものに注力するのは経済的な意味で非効率になってきます。
つまり、かなり合理的な理由で老害要因が芽生えるわけです。要するに、プログラミングみたいなカネにならないことに時間を使うヒマが無いのです。
技術とくにプログラミングの世界は日進月歩で、常に学びつづけないとスキルが時代遅れになるという恐れが常にありますが、それに対処することが経済的に非合理的なことなのです。これは非常に困りますよね。
今までの経験からのアナロジーで理解する弊害
40歳まで生きると、色々な経験が蓄積されてきます。それで
- 「新しい物事を理解するスピードは実は同レベルのスキルの若い人よりも速い」
です。
これは、一般的には逆に思われていると思いますが、確かなことです。既に知っていることに関連付けて、それとの「差分」に注意するだけなので効率が良いわけです。
老害的な要因になるのはその先で、
- 「新しい物事の「差分」が取るに足らないことに見えてしまう」
ことです。
新しい物事を理解するときに占めるパートとして、既に知っていることのほうが大きいので、その新しさを生み出している「重要な差分」が、相対的に重要でないように見えてしまうのです。
本当は、その小さく見える「差分」こそが革新的であり、そうでなかったら今までの物事がそのまま通用するはずなのです。それが通用しなくなったから「差分」が生まれているのであり、
差分の大きさが小さなものに見えてもそれが非常に重要なものでありうる
ということを常に意識しなければなりません。これは非常に面倒くさいです。
全く理解できないことがありうることへの諦めと抵抗
さらに、時代が進歩すれば自分には全く理解できないような技術や物事や価値観が現れるかもしれません。
そんな事態は想像したくもありませんが、これまで生きてきた諸先輩方がどんなに優秀であってもそういう老いからは逃れられなかったことを踏まえると、自分もそうなりうるのは明らかです。
そんなとき、
- わからないままに、とりあえず受け入れる
- わからないものはしょうがないので諦める
のいずれの姿勢も、老害要因になりえます。自分が若い時にこうした態度をとる人たちを見てそう感じたからです。
ではどうしなければいけないかというと、
- 絶対に理解できないことに時間や手間をかける
以外に、老害要因を取り除く方法はありません。
これは「老い先短いから無駄なことをしたくない」という老害要因と合せてダブルで効いてきます。
なぜなら、無理ゲーとわかっているものに、貴重な時間を使うことは苦痛以外の何物でもないからです。これは辛いですよね。
というわけで
老害要因をいくつか挙げてみました。
いつまでも若い気持ちでいたいのだけど、難しそうですよねぇ(遠い目)。